一関在住の作家・及川和男さんの「なみだの琥珀のナゾ」(182頁、税別1,400円)が岩崎書店から出版されました。

 及川和男さんは、「子ども読書年」にこの作品を書きながら、子どもたちの読書が、もっともっと盛んになるように願っていました。読書だけでなく、身をもっての経験、つまり体験をもっともっと豊かにつんでほしいとおもいつづけました。

 そんな及川さんのおもいが、物語の中に感動的に描かれています。子どもたちの心に、美咲の体験をとおして人と人のつながりの強さ、やさしさ、美しさを映し出してくれるでしょう。「人間ってみんなつながっているんだ。自分ひとりだけじゃないんだ」 という美咲の体験は、子どもたちの心の中にいつまでも光り輝くでしょう。たくさんの子どもたちに読んでほしい本です。

 『美咲のおばあさんのカズさんには、長い間大切にしているものがある。半透明の美しい琥珀のペンダントだ。カズさんのおかあさん、つまり美咲にとっては、ひいおばあさんにあたる、トヨさんという人の形見だという。だが、ペンダントにまつわる秘密について明らかにしないまま、トヨさんは亡くなってしまったので、ナゾにつつまれたままだった。小学校最後の夏休み、美咲はカズさんと、三陸海岸にある久慈市を訪れた。ペンダントに秘められたナゾを解くための旅だった。』



 夏休みを迎えようとしていたある日のことです。
 先生は「六年生の夏休みに、ああいうことがあったなあ、こういうことがあったなあって、思い出に残るようななにか、本との出会いでもいい、なにかへのチャレンジでもいい、とにかく自分からなにかをすることで、いい思い出をつくって欲しい」と言われました。

 私の名前は美咲。今、問い教から岩手県の三陸海岸に沿って久慈市に向かっています。久慈市は琥珀で有名なところです。今度の旅は、私のおばあさんの胸を飾っている半透明の、赤みをおびた茶色のビワくらいの大きさの琥珀のペンダントがきっかけです。そうそう、私はおばあさんをカズさんと呼んでいます。

 その昔、戦争のために集団疎開でカズさんが長野県に行くことになったとき、カズさんのお母さんは、東京はいつ焼けだされるかわからないと言って、琥珀とお父さんのスケッチブックを手渡されたそうです。それをたよりにしての小袖海岸への旅です。

 琥珀博物館を訪れたときのことです。そこで驚きとともに発見したのは、カズさんの胸のペンダントと瓜ふたつの琥珀のペンダントでした。そしてそれはめぐりめぐってカズさんの父母の出会いであったのです。そのことを知るや父方の琥珀の所有者は、それをカズさんにあげようと申し出ます。しかし、カズさんは逆に自らの琥珀を博物館に寄贈することにしたのでした。

 わずか三日間ではありましたが、これまで経験したことのない、おもいがけない発見と出会いが、ぎっしりとつまった日々をおくることができました。そして、いっしょうけんめい生きることが人生なんだということを学ぶことができました。

 博物館の展示室で、ふたつの琥珀が銀のくさりで結ばれたように、多くの感動体験が人の心と心を結びつけていきます。主人公の感動は読者の感動であります。そして、そこに作者の力を感じるのです。

(一関釣山 岩井憲一さん)