一関在住の作家・及川和男さんが「なんでも相談ひきうけます」(189頁、税別1,400円)を岩崎書店から出版した。本作品は1999年、第15回北の児童文学賞を受賞。

 おとなの社会の中で、与えられた条件の下で生きて行かざるをえない子どもたち。塾通いで疲れ、悩みがあっても出せないでいる子どもたち。大きな社会問題になっている子どもたちの事件。いま、子どもたちの心の叫びを、大人たちへの批判を、子どもたちの視点からつづる作品です。子どもを原点に考えることの大切さ、親子の話し合いの大切さを、親や教師が子どもたちといっしょに読んで、いま一度見直す機会にしてほしい。

 物語に出てくる「なんでも相談少年団」や「オリザさん」がアチコチにいたら、自殺する子どもはいなくなるだろう。すぐキレたりする子どもたちも直るだろう。

 暗くなってから、塾から一人で帰ってきた子どもとエレベーターで一緒になった。子どもらしい楽しい表情はなく、気のせいか疲れた様子だった。そういえば、外で一緒に遊んでいる子どもたちの姿を見かけなくった。いま、子どもたちの心は「オリザさん」や「なんでも相談少年団」を必要としているのでしょう。

 著者のことば  「あとがき」より
 こまったことにぶつかった時、なやみごとで胸がつまってしまったような時、だれもが、だれかに相談したくなるよね。
 でも、相談するのにも勇気がいるし、相談相手が信じられるかどうか自信がわかなかったりすると、ついためらってしまう。
 でも、でも、やっぱりひとりでなやんだり、キレたりするより、だれかに相談して、すっきりしたいと、これまただれもが思うことなんだ。
 いっしょになって考えてくれる友がほしい。親や先生に相談できないことだってあるのだもの。みんな、そう思っていませんか。
 じっは、「なんでも相談少年団」は、そのような思いがかさなりあう中から生まれた、ゆかいな仲間たちなのです。
 よしきたヨーちゃん、わかったアンちゃん、のんきなノノちゃん、こまったコーちゃん、まだまだマーちゃん、そして大将。みんな相談事でむすばれた仲間なんだ。こんな仲間が、みんなのまわりにもいたらいいなあ、と思います。いや、いるよ、いるよ。
 相談から生まれた友情? 友情があっての相談? どちらもほんとうだと思うけれど、相談て、すばらしい力や友情をつくりだすものだなあ、とわたしは書きながらおどろいてしまった。
 ナゾっぽいオリザさん、五本ケヤキの農家のおじさんおばさんの力も大いにあったね。だから、このものがたり、親や先生にも読んでほしい。読むようにすすめてほしい。きっといいことが生まれてくると思うよ。

 北の児童文学賞受賞のことば
 子どもを原点に     及川和男

 受賞の知らせをいただいて、なんだか面映ゆい気持ちになった。やまがた児童文化会議が須藤克三さんの業績と志を記念して創った 「北の児童文学賞」と、なにより山形の人々が、このような尊い営為を積み上げてこられたことに敬意を抱いていたから、わたしごときにと、恐縮の塊となってしまった。

 受賞作もそうだが、子どもを原点に考えるということを、わたしは心がけてきた。それは盛岡にある虚弱児療育施設「みどり学園」のルポ『鐘を鳴らして旅立て』(新潮社)を書いたときに学んだ観点だった。おとなは、ついついそこを見失う。現在の子ビもをめぐるきびしい状況は、じつはおとなたちがタネをまいてしまったものだ。子どもにはまったく責任がない。だからなおさら、子どもを原点にすべてを考えていくことが強く求められる。

 受賞作にえがいた子どもたちの悩みと相談活動は、われわれおとなたちに反省を迫ってもいるのだ。その作品が評価されたことが、今はとてもうれしい。     
(やまがた児童文化会議会報38号より)


北の児童文学賞
 「北の児童文学賞」は、昭和60年(1985年)に創設された、東北・北海道の地域に根ざした児童文学の創造の指標となる作品に授与される文学賞です。「北の地域に根ざした児童文化の創造」という狼煙をあげた故須藤克三さん(児童文学者・評論家・山形出身)の、熱いおもいと遺志を受け継ぎ発展させるために設けられました。やまがた児童文化会議が主催し、毎年開催される「東北・北海道児童文化のつどい」で贈呈されます。今回は15何日、岩手では三人目です。