手賀沼遊歩道の鳥たち


日の出前、鳥たちの朝は早い


 手賀沼の朝は早い。日が昇る前、もう鳥たちの活動が始まっている。まだ、水の館や親水公園に散歩の人たちが来る前には、カワセミが池の柵にとまって、すぐ近くから観察することもできる。望遠レンズと三脚を持って出かけたら、池の鳥たちにちに餌をあげる人たちが来て、カワセミは近寄ってくれななかった。

 カワセミが好きな場所は噴水の河童。河童の頭や足下にとまって、ときどき水にに飛び込んで小魚をくわえて戻ってくる。展望台からは距離があって、カワセミも安心できる場所なのだろう。もしかしたら河童と仲良しなのかもしれない。ご機嫌がいいときは、岸辺近くのパイプの杭にとまってくれることさえあった。

 最近、誰かがパイプに小枝を差した。三脚を立て、コーモリ傘に隠れてカワセミを待つ人の姿も見られるようになった。ちょっと意地悪なカワセミ君、そのお兄さんが来ると河童の頭にじっととまっていて近寄ってこない。ずいぶん気長に待ったのに、機材を自転車に積んでお兄さんが立ち去ったら岸辺近くに飛んできた。何日も同じ場所で待っていたから、きっといい写真が撮れたことであろう。

 いつ頃からか、二羽が噴水の展望台近くに住み着き、人気者になっている。めっぽう気が強くて、大きな顔で遊歩道に上がってくるし、散歩の犬には威嚇して飛びかかる。でも、餌をくれる人は分かるらしく、おとなしくすり寄っていく。

 コサギのすみかも同じ場所。お気に入りの場所は親水公園の木の上、人通りが途絶えると池に舞い降りてしばし沈思。じっとたたずむ姿は、親水公園一の哲学者。

 ふと足元を見ると、スズメが数羽、無邪気にちょこちょこと動き回っている。一羽がすっと近寄ってきて何かをついばんだ。「虫だ!」。虫をくわえて、ぴょんと向きを変えて離れていった。どうやら私は彼らのお食事をじゃましたようだ。

 遊歩道を散歩中の人たちが立ち止まって、岸辺のカモたちに餌をあげはじめた。めざとく見つけたオオバンが群をなして移動し始め、カモメは餌が水面に届く前に横取りしようと大空中戦を開始した。こうなったらカモメの独壇場、その図々しさはカラスもかなわないだろう。そんな様子をじっと眺めていたカラスはあきれ顔、開いた口がふさがらない。

 遊歩道を湖北に向かって歩く。左にあやめ園を見ながら進むと小さな公園がある。その先の橋付近も鳥たちの集まるところ。人が近づくと、餌にありつけることを学習したカモメが柵に鈴なりになる。橋の下にはバンオオバンなどもいる。ときにはコブハクチョウも来るが、釣りのおじさんが来ると鳥たちはどこかに行ってしまう。テグスは鳥たちにとって凶器、気になりますね。

 ちょっと離れたところでは鵜が「羽閥会議?」、永田町の派閥の先生方よりよっぽどお行儀がいい。どっちが烏合の衆かわからない。「最近、手賀沼もすっかり汚れてしまったな」と、人間どもの水環境破壊を嘆きながら、「我ら水鳥の食・住環境をどう守るか」が今日のテーマか。どうやら結論は、「利根川の水を取り込んで、手賀沼がきれいになるのを待とう」ということになったようだ。

 少し歩くと釣り堀がある。この付近では野良猫コブハクチョウカナダガンなどに餌をやる親切なおばさんが何人も来るので、鳥たちのたまり場になる。1999年はコブハクチョウが子育てをやっていて、遊歩道を通る犬に襲いかかったこともあった。2000年に子育ての姿が見られなかったのは、夏に雛がヒョウの被害にあったからだろうと。

 今年は2ヶ所でコブハクチョウが雛を育てた。滝前の小公園付近では、遊歩道から見える位置につがいのコブハクチョウが巣作りを始めた。枯れた水草をくわえてせっせと積み上げていく。ここでは4個ほど抱卵したが雛は1羽しか孵らなかった。田植えが終わったら、親子3羽が植えたばかりの田圃に入って食事をしていた。農家の人はさぞかし頭が痛いことであろう。コブハクチョウたちが沼から田圃に通うときも大変だ。散歩の人たちが近づくと親鳥が攻撃してくるので、遊歩道を通り過ぎるまで待つしかない。樹上にカラスが集まって大騒ぎするので親鳥は神経質になっているのだろうか。

 湖北側の遊歩道終点付近のカップルは、7羽の雛をつれてカメラの列の前に現れた。一羽の雛はひ弱で、親の後を泳いでいてもすぐに遅れ、岸が近いと一羽だけすぐに上がってしまった。見物人たちが心配する中、何日かは頑張ったがやがて雛は6羽になった。橋の上には一日中見物人が集まり、パンなどの餌を投げ込む。ただかわいいからか、餌を与えるのは自分だけと思っている人が多いのか、餌の与えすぎが気になる。コブハクチョウが食べないパンのほとんどは、コイが集まってきて消化している。コブハクチョウたちの好物は、常連のおばさんが摘んでくる新鮮なクローバーの葉のようだ。食事中にほかの鳥が近づくと猛烈な勢いで追いかけて攻撃する。

 遊歩道整備作業の合間、見事な椅子で休憩している姿を見つける。そろそろ湖北側が終点近くなると、公園の前に小さな船着き場が見えてくる。ここでは鳥を見ている人が多い。餌を持った人が来るといち早くカモメが飛んでくる。少し離れた浅瀬にはコサギ、コブハクチョウがいたが、冬になるとガン・カモ類が増えた。

 遊歩道の終点は湖北側から流れ込むの橋。愛嬌のあるアヒル、コブハクチョウ、カモたちに餌を与える人が多い。人が立ち去り、静かになるとカワセミも飛んだ。少し上流のコンクリート壁にとまって、川に飛び込んで漁をする。春先には、土手の上に三脚が立ち、望遠レンズの筒先をたどると土手に梅の小枝がさしてあり、リモコンで離れたところから撮影した人もいた。常連もいたらしく、カワセミの撮影談義に花が咲いていたこともあった。だが、コンクリートの護岸工事を行ってから、カワセミが飛ぶ姿は見られなくなった。

 手賀沼の遊歩道を歩くと、それぞれの季節に、いろんな鳥たちとの出会いがある。ちょっと物足りなかった人は、鳥の博物館に寄ってみるといい。じっくりカワセミを見ることもできるし、トキにだって会える。